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色素増感型太陽電池の製作

平成17年度前期の「電気化学」の講義の中で色素増感型太陽電池の製作実験を行いました.
これはその記録です.(写真の撮影は大学院生が協力してくれました.)
色素増感型太陽電池とは?
 色素増感型太陽電池は1991年にスイスのグレッツェルによって発表された新しい太陽電池です.透明な導電膜をつけたガラスを使用し,その表面に酸化チタン微粒子の膜,さらにその上に色素を吸着させ,負極とします.もう一方の導電性膜をつけたガラスを正極とし,電解質溶液をはさんだサンドイッチ構造になっています.
 酸化チタンは光触媒で,太陽光によって電子・正孔対を得ることができますが,エネルギーの高い紫外光しか吸収することができないため,色素を使って吸収波長帯域を長波長側に広げ,エネルギー効率を上げる工夫をしています.植物の光合成と似ているので,「光合成型太陽電池」とも呼ばれています.
 従来の太陽電池はシリコンをベースにしていて高価であるのに対し,色素増感型太陽電池は安価で自然に優しい材料を使っているので,次世代の太陽電池として注目されています.現在,光から電気エネルギーへの変換効率を上げるための研究が盛んに行われているほか,極薄電池や曲げることができるペーパー電池,カラフルな電池などへの応用も考えられています.
 
作製手順

1.まず,テスターでガラス板の透明電極のついた面を確認し,表にします.
2.次に,表の面の両端をセロハンテープで固定します.
3.両端のセロハンテープの間に酸化チタンのペーストを1滴垂らします. 酸化チタンのペーストは,酸化チタンの粉末を水でよく溶いたものを使用します.
4.スライドグラスを使って,ペーストをできるだけ均一に伸ばします.ちょうど,両端のセロハンテープがガイドになって,セロハンテープの厚みにペーストを伸ばすことができます.
5.酸化チタンペーストを塗ったスライドグラスをアルコールランプであぶって,酸化チタンをガラスに焼き付けます(焼結).できれば,この前にドライヤーなどで水分を飛ばしておいた方がよいです.講義では時間がなかったのでその手順は省きました.また,ガラスは温度むらができると割れてしまうので,できれば,写真のように持つのではなく,網か何かに乗せて均一に熱した方がよいです.講義では失敗してガラスを割ってしまいました.(^^;
6.しばらくすると薄膜が褐色になり,さらに熱し続けると元の白色に戻ります.この時点で焼結膜の完成です.ガラスを急激に冷ましたり温度むらができたりすると,ガラスが割れます.少なくとも10分以上かけてゆっくり自然冷却してください.ガラスはかなり熱くなっているので,取り扱いには気をつけてください.
7.十分冷めたら色素で染色します.色素にはハイビスカスのドライフラワーを使います.ドライフラワーを水に浸け,その中に焼結膜を浸します.最低20分は必要で,できれば一晩浸けた方が色素の定着がよいようです.色素は濃い方が光電流を稼ぐことができます.講義では,あらかじめ一晩浸けた焼結膜も使用しました.
8.染色された焼結膜は軽く水洗いして,乾かします.急ぐときはドライヤーで乾かすのがよいでしょう.
9.次に正極を作ります.透明電極のついたガラスの表面をテスターで確認したあと,その表面にグラファイトの薄膜を作ります.といっても柔らかい鉛筆で電極の表面を塗るだけです.講義では受講している4年生が作ってくれました.
10.いよいよ電池を組み立てます.写真の左手が負極である酸化チタン焼結膜電極,右手が正極であるグラファイト電極です.まず,酸化チタン電極の方に電解質溶液であるヨウ素溶液を一滴垂らします.
11.垂らしたヨウ素溶液を2枚の電極でサンドイッチにし,両端をクリップで固定します.また,負極と正極のガラス板をワニ口クリップで挟みます.このとき,ワニ口クリップが他の電極と接触しないように気をつけます.
12.光を当てて電圧が発生するか確かめます.教室にオーバーヘッドプロジェクタがあったので,その上に作製した電池を乗せて,電源のON/OFFでどのような変化をするか調べました.実は,教室の蛍光灯の明るさだけでも,100mV程度の電圧が発生します.暗い箱の中に入れてやるとほぼ 0 mV まで電圧が落ちるのが確認できます.オーバーヘッドの光で約400mVの開放電圧を得ることができました.また,短絡電流は約0.5mAでした.

参考にしたサイト

by Y. Horie