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変換電磁気学


▶︎解説動画

変換電磁気学の解説動画


▶︎研究背景

 相対論において重力場による座標変換に対してマクスウェル方程式が不変となり, 電磁波や光の軌道が変化することが知られています(重力レンズ). 一方, 任意の座標変換に対しても構成関係式に適切なテンソル変換を施せばマクスウェル方程式を保存することができますが, このテンソル変換を媒質パラメータへの操作として捉えれば, 任意の座標変換を媒質により実現することができます.


 変換された座標系と等価な媒質は基本的に不均質かつ異方性を示すため自然の材料では実現できませんがメタマテリアルであれば実現できます. 変換電磁気学(Transformation Electromagnetics)あるいは変換光学(Transformation Optics)というのは, メタマテリアルを使って座標変換と等価な電磁波や光の制御を行う概念のことを指し, 2006年にJ. B. Pendryらによって提案されています. 


 変換電磁気学の概念に基づけば, 従来の鏡やレンズを用いた反射や屈折による電磁波の伝搬制御に比べ, 格段に自由度の高い制御が可能となります. 例えば, 覆った物体を不可視にする透明マントや, 任意の物体からの散乱波を模擬しあたかも物体がそこにあるかのように見せかけるイリュージョン媒質など, 特異な媒質を実現できる可能性があります.


 本研究室では, 回路モデルを使って変換電磁気学の概念に基づくメタマテリアルを設計する手法を提案しており, これまでいくつかのメタマテリアルを実際に試作・実験まで行っています. 回路の電信方程式とマクスウェル方程式との間には双対性があり, 例えば比透磁率は回路の単位長さあたりの自己インダクタンス, 比誘電率は単位長さあたりのキャパシタンスに対応しているとみれば, 材料を回路で表現することは可能です. このような基礎理論を変換電磁気学に基づくメタマテリアルにも適用して設計・解析や実装に繋げています.